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ちょっと長い弓



色々な弓が日々目の前を通過していく中で、ちょっと長い弓に出くわすことがある。公差の範囲内と言えるものではないので、依頼を受けて長いものを作ったのだと思う。ちょっとだけ長いチェロ弓、ちょっとだけ長いバス弓など、どちらかというと低音の弓に多い。気になってオクトバスの弓はどうであったか調べてみると何てことはなくて、わりと普通の弓を使っている。馬の尻尾の長さと人の手の長さは決まっていて昔はそれが弓の長さを制限するものであったが、現在はナイロン製の弓毛があるので長い弓を作ろうと思えばいくらでも長い弓を作ることが出来る。



演奏可能な世界最大の弓としてギネス世界記録に認定されているものではブナで作られた5m22㎝の弓があり、重さは15㎏。これを二人がかりで抱えて演奏する。アップ、ダウンの度に二人が歩調を合わせて行ったり来たりして音を出す。おそらく張力をかける反りは人の力で巻くことが出来なくなる為、入れていない筈だ。この弓で演奏する楽器は4m27㎝もあって、バイオリンの3オクターブ下で調弦するらしい。顎当てまで付いていてジョークとしては上出来だが、勿論使えたものではない。


自分が今まで作った最長の弓はヴィオローネを弾いたと思われるウィーン美術史美術館にある弓を参考にブナで作った弓で、79.8㎝ある。ショートボウにはじまり、長く途切れない音を目指して弓を徐々に伸ばしていった最終到達点がこの長い弓だと思う。これ以上の長さだと馬の尻尾の長さと人の手のリーチが足りないが、ここまでの長さであれば弓を長くしてもケースに入らないということを除き、日々のメンテナンスは問題なく行える。


軍隊において記録が残る欧州の男性の平均身長は19世紀中頃から11㎝伸びているという。弓の長さを決める人の腕の長さはフレンチの銘弓が作られた時代と現在では異なる筈なので、ちょっと長い弓が選べる環境があっても良いのではないかとも思う。

 
 

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鎌田 悟史 

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