コントラバスの弓色々
- Satoshi Kamata
- 5月30日
- 読了時間: 3分
最近は弓を手にするとバランスや強さ云々ではなく最初に頭に浮かぶのは、材料の質と比重である。それを測ることから弓作りが始まるので、自然とそのような見方になっているのだと思う。継続して同じモデルを作り続ける為には高い精度で材料の選別をしなければならない。量産で大量に製材して選別するドイツのシステムでは、角弓であっても全てを旋盤で一旦丸く削る。同じ寸法に整えた方が選別はし易かったということもあるかもしれない。ただしドイツでは旋盤が導入される以前から全ての材料を丸く削っていたというから、これは製作における哲学のようなものでもある。
丸く削るメリットは反りを綺麗に入れ易くすることにある。四角や八角ではびくともしない材料も、丸く削ると全方向にしなるようになる。このシステムでは反りを入れて木目によっては捻じれるような材料も、反りを入れた後に削ってフロッグを合わせれば良く、コントラバスなど反り入れが大変な弓にはこちらの方が合っているのかもしれない。大量に製材した材料から同じ性質を持った材料を工房ごとの基準で選別した為、同じような弓が次々に出来る。比重も自分が見た限りではほぼ同じ材料を使っている。


ジャーマンのバス弓において個人的に作りはフレッチナーが一番好きだ。材料の選択、ヘッドやフロッグのサイズ感やアウトルックが洗練されていて良い。ニュルンベルガーのバス弓もアウトルックが端正で、ドイツボウらしい粘りのある材料を使っていて良いと思う。日本の弓作りを語る上で欠かせないノイドルファーは、小振りながら個性があって面白い。バス弓といえばフレッチナーやホイヤーといったモデルしか知らなかった自分にとって、細身で小振りなノイドルファーの弓を初めて見た時はショックであった。あのサイズで重量をクリアする為には1.15とかの比重の材料を使う必要があって、普段コントラバスの弓にはあまり選ばないような重い材料を使用している。音が良いと評判のギュンター・ホイヤーの弓の比重はどちらかというと軽めのフレンチボウに近く、決まって1.01前後である。音は軽い材料のほうがきっと良い。ドラゴネッティーやボッテジーニがイタリア時代に使っていたと言われる弓もヨーロッパ原産の木を使い軽いものであったといい、ボッテジーニの弓は“Il Devastatore”という名前がついている。この辺の起源についていつかもう少し詳しく調べてみたいものだ。
自分ではジャーマンのバス弓を形にしてみたいと思いずっと興味の対象として眺めてはいるものの、重い材料を使用してほっそり小振りに仕上げるか、ホイヤーのように軽い材料で太めに仕上げるのか、或いはフレッチナーぐらいにしておくのか、フロッグの高さやサイズはどうするのかなどジャーマンのコントラバスの弓は選択肢が存外に多くて正解がよく分からない。フレンチボウにジャーマンフロッグを付ける人、フレンチフロッグをそのままにジャーマン持ちをする人などもいるので、あまり深く考えないほうが深みにはまらずに済むのかもしれない。