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ペルナンブーコについて Part6-今後の展望

更新日:2 時間前


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今月24日から来月5日にかけてCITESの20回目のミーティング(CoP20)がウズベキスタンのサマルカンドであり、ペルナンブコが1類に格上げされるのか、2類に留まるのかが決まる。ブラジルが6月に再度格上げを提案している。どちらであってもここから先は前人未踏の領域であって、自分などは座して待つしかない。


もし万が一1類に上がった場合どのようになるかというと、アライアンス(International Alliance of Violin and Bow Makers for Endangered Species)によれば1970年代から続くブラジルでの植樹の取り組みが全て無駄になり、例外を除き基本的にはペルナンブコ製の弓の売り買いが出来なくなり、財産としての弓の価値がなくなり、弓の越境にはCITESの許可証やMIC(Musical Instrument Certificate)が必要でスタンプを国境で押してもらうこととなり、MICを受け付けない国には持ち込みが出来ず、越境携帯の手続きがえらく繫雑となり、2007年以前に手に入れた弓であることを自力で証明しないといけなくなり、代替材の弓が主流となり、極めつけは弓作りの文化が終焉を迎えるとある。想像し得る最悪の状況ではあるが、こちらであっても自分の日常は左程変わらないのかもしれない。


伝え聞く話では国が賛成にまわったなど悲観的な雰囲気も漂う中で、自分はアメリカチームのこれまでの活動、努力や積み重ねてきたロビー活動の力を信じている。1970年代から今までに300万本の植樹が行われ、天然のペルナンブコ個体群の保全、持続可能なペルナンブコのプランテーションや育てた材料の商取引の構想など、アメリカのIPCIが主体となって1類への格上げを阻止すべく十分な種まきを過去25年の間にしてきている。ペルナンブコは弓作りに必要な直径25cmに育つまでに約30年を要する。一年に0.76cmずつ成長し伐採可能な大きさになるまで30年かかるというが、ブラジル各地で植えられた木の中で成長の速い特性を持つものを選別して育てれば25年に短縮できるという。研究者によれば葉の大きさが大きいものと中ぐらいの木がリグニンを多く含んでおり弓作りに適しているといい、それらをプランテーションで栽培し持続可能な木材生産が出来るようになりつつある。木材の密度は降雨量や平均気温といった環境的なものというより遺伝であり、先天的なものだという。ペルナンブコの天然木とプランテーションで育った人工栽培の木を識別する技術も確立しつつあるようで、近赤外分光法を用いて行う。弓作りに適した材料がプランテーションで人工栽培され、違法伐採されたものではないことが証明できる技術があれば2類のままでも良いでしょ?という主張を彼らはこの度行うのではないか。


あるIPCIのレポートによれば中国を除く世界には約400人の弓職人がいて、それぞれが年に10~25本の弓を製造している。企業製造分と合わせると年に15000本の弓が生産されていて、15立方メートルの木材が必要とのことである。微々たるものとは言わないがこれらをプランテーションで育てることは十分可能で、1類に上げる必要はない。マタアトランティカの森が消失したのは宅地化に加え製紙会社や牧場主による皆伐にあるので、我々からの募金だけではなく彼らにも資金提供を義務化すべきである。


一人の職人が生涯で使用する木材は丸太2本分であり、3本もあれば十二分に職を全うできるだろう。持続可能な森の保全と利用というのはどこの国でも問題を抱えていて、黒檀やメープル、スプルースにおいても自分が現役であるうちに必ず規制の対象となると考えている。森が消失しようとしていれば木材、パーツ在庫の多寡に関わらず規制がかかるからだ。ペルナンブコでの一連の取り組みが、弦楽器関係者自ら問題解決をした最初の事例となることを願ってやまない。

 
 

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